フェイさんの作った三女(運命の三美神)システムの各種測定,
Oct 09,2000 By Y.Iida


今まではイーディオのオリジナルのキット、スピーカ・システムは比較的小型のウーファ(11cm〜15cm)が多かった。この理由は主として2wayでは14cmくらいがかなり帯域バランスも取り易く作り易いのです。また当然ながら10リットル程度の箱で十分楽しんでいたたけます。

今回はフェイさんが17cmに挑戦しました。三姉妹シリーズとか、運命の三美神とかいうのだそうです。

外観は左の写真を見てください。結構格好いいでしょう?もっともまるで包帯を巻いたようなツィータが乗っていますね。この上のほうのツィータがScan-SpeakD2905-9500です。でその下がSEAS P17RCY、一番下が最初にセットしたSEAS 25TAC/Dのメタル・ドーム・ツィータです。
フェイさんは最近こういうベニア板の上に塗装しているシステムが増えて来ました。今回はけっこう明るいブルーです。

当初は寸法図、板取りが載っているフェイさんのWebにあるようにウーファが透明なコーンのPPXコーンのSEAS T17RCY/Pでした。これで結果が良かったのでウーファも取り替えてチェックしてみました。
ネットワークはタイプI(オリジナル仕様)タイプII(改造高級版)と2種使いました。まずは健康診断としてインピーダンス特性です。

2wayですのでお決まりのMLS信号によるインパルス測定でのデータからです。

図1はまずはT17RCY/Pのオリジナルの特性としてインパルス特性から、ウーファはSEASのPPX透明コーンのSEAS T17RCY/Pです。ツィータはメタルドームのSEAS 25TAC/Dです。まずまずの特性です。この位置だと少しタイムアライメントがずれている感じです。そこで周波数特性はスピーカ全体を後ろに傾ける代わりに上下逆にして、ウーファ軸上の位置で計測してみました。
図1:SEAS T17RCY/P 17cm PPXコーン・ウーファとSEAS 25TAC/Dメタル・ドーム・ツィータの総合擬似無響室インパルス特性


次はこれをFFT変換して周波数領域で見たものです。素直に150Hzくらいから20KHzまで±3dBに楽に入っています。少し中域の1.7KHz近辺盛りあがっていますがかなり素直な特性です。タイムアラインメントはスピーカを少し後ろに傾けることで達成できます。
図2:フェイさん三女(SEAS T17RCY/P+25TAC/Dトータル周波数特性=ネットワークはタイプ1)。

さてこれに対して上の写真のP17RCY+D2905-9500(00)のシステムはどうでしょうか。今回はじめて色々なデータを取ってみました。

図3:三女Version2のインピーダンス測定
下の図は三女のウーファをSEAS P17RCYとしてネットワークはタイプ2で測ったものです。フェイさんの予想より広い範囲でバスレフが利いているとのことです。いわゆるfdは40Hz近辺です。

図4:三女Version2のウーファP17RCYのネットワーク込みでの擬似無響室インパルス測定
下の図は三女のウーファをSEAS P17RCYとしてネットワークはタイプ2で測ったものです。バスレフでポートがあるとゼロに静定せず、うねうねと余波が残ります。わずかに1KHzくらいの共振もあるように見えます。

図5:三女Version2のウーファP17RCYのネットワーク込みでの擬似無響室インパルス測定
これから計算されたP17RCYの周波数・群遅延特性
上はウーファのインパルス特性、下はウーファのその時の周波数・群遅延特性。少しうねりはあるものの、100〜3KHzはほぼフラットでけっこう素直です。

図6:三女Version2のウーファP17RCYのネットワーク込みでのウォーターフォール測定
さらに上のデータから計算されたWaterFall Plotです。特にひどい共振などはないことが判ります。

図7:三女Version2のウーファP17RCYの近接測定による低域測定
LAudでは擬似無響室測定では時間窓により打ち切り行っているため低域は擬似無響室測定のMLS信号によるものでは見られません。そこでSN比を上げ、反射波の影響を最小限にするため、マイクを近づけて100Hz以下を計測することができます。

図8:三女Version2のウーファP17RCYのバスレフポートの近接低域測定
上はウーファ振動面でしたがバスレフ型のエンクロージャの場合、ポートの出力も測らないとシステムとしての低域は判りません。ウーファの近接測定と同じようにバスレフポートの開口部で測ったものです。マイクを近づけて100Hz以下を計測することができます。これでもう一つ判る問題点はやはりバスレフポートから200Hz以上の周波数成分も漏れて来ていることです。これが場合によってはバスレフくささにもなります。これは吸音材などを入れることでかなり収まります。。

図9:三女Version2のツィータD2905-9500-00の擬似無響室インパルス測定
下は今回オリジナルから変更したScan-SpeakのD2905-9500-00のツィータの各種測定です。さすがに立ちあがり立下り共かなりきれいな波形です。

図10:三女Version2のツィータScan-Speak D2905-9500-00の周波数特性
上で測ったインパルス特性からFFTで伝達関数を求めると下の周波数・群遅延特性が得られます。ちょうどタイプ2の5μFのコンデンサで切った状態で3KHzから落ちはじめています。

図11:三女Version2のツィータD2905-9500-00のウォーターフォール・グラフ
これも特に言うことはありません。大変素直な特性であります。

図12:三女Version2のウーファP17RCY+Scan-Speak D2905-9500-00の擬似無響室のインパルス測定
下の図はタイプ2のネットワークとウーファ、ツィータを全て入れた状態でのものです。なお、ツィータはウーファに非常に近い位置にありますがタイムアライメントから言いますと70mm近くウーファのバッフル面より後ろに下げています。


図13:三女Version2のウーファP17RCY+Scan-Speak D2905-9500-00の周波数・群遅延測定
下の図はタイプ2のネットワークとウーファ、ツィータを全て入れた状態でのもので部屋の特性は時間窓の打ち切りにより事実上のぞいてあります。群遅延から見る限りでは「70mm近くウーファのバッフル面より後ろに下げて」いる事の効果があるようです。特性的には大変フラットです。もう少しツィータのレベルを上げますと150Hzから20KHzまで±1.5dBくらいに収められそうです。これはまたの挑戦としておきましょう。


図14:三女Version2のウーファP17RCY+Scan-Speak D2905-9500-00の室内音響込みの特性測定
下の図はタイプ2のネットワークとウーファ、ツィータを全て入れた状態で部屋の特性も含まれています。通常この部屋(雀荘2階)特性では70Hz近辺に+5〜10dBくらいの山がある。


図15:三女Version2のウーファP17RCY+Scan-Speak D2905-9500-00の二次・三次歪み率測定
今回はじめてネットワークまで実装したスピーカに対して、どの程度のものなのか測定しました。この結果から見る限りは150Hz〜10KHzまで歪み率1%以下、最も耳につきやすい500Hz〜3KHzでは0.3%以下です。かなり優秀です。


結論/感想:
ユーロユニットとして測定のデータは当然ながら優秀な類に仕上がっている。音はこの種の2wayとしてはそれほど音量を上げない限りはかなり高級な3wayシステムとも比肩するレンジと低歪み感。
これらの測定から三女Version2のシステムとしての仕様は次のようになります。

形式:SEAS P17RCY  17cmポリプロピレン・コーン・ウーファと Scan-Speak D2905-9500-00 28mm 磁性流体入りソフトドーム・ツィータによる2wayスピーカ・システム
エンクロージャ形式: バスレフ・ポート方式
ネットワーク:電気的にはインピーダンス補正付き6dB/octのもの
周波数特性: 40Hz〜20KHz±5dB(通常の居室にて)、60〜20KHz±3dB(無響室での仕様)
歪み率特性: 100〜10KHzで全帯域1%以下(約0.2W入力時)、500〜3KHzで0.3%以下(同)